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最初にHANAを知ったのは、妻がキッカケだった。
「これ見てみて」
そんな感じで勧められた。
画面には、七人の女の子がいた。
一人ひとり雰囲気が違って、いわゆる同じ方向に揃えた感じではなかった。
自分は見ながら、
「個性的なグループだね」
と言った。
たぶん、そのあとに、
「自分はそんなに興味ないかな」
みたいなことも言った。
今思うと、少し冷たかった。
妻は別に怒るでもなく、
「あ、そう」
くらいで終わった。
その会話も、それで終わった。
ただ、自分の中では終わっていなかった。
一人でいる時に、また見た。
最初は本当に軽い気持ちだった。
一曲だけ。
少しだけ。
そんなつもりだった。
でも、気づくと他の動画も見ていた。
別の曲も見た。
インタビューも見た。
オーディションの映像も見た。
かなり見ていた。
妻に興味ないと言った人間の行動ではない。
ただ、ここで問題がある。
一度「興味ない」と言ってしまうと、急に好きになったことを申告しづらい。
夫婦の間には、たまにこういう小さな意地がある。
別に誰も勝負していないのに、負けたくない。
何に負けるのかは、よく分からない。
そんなことをしているうちに、自分はHANAがどういうグループなのかを知った。
No No Girls。
何度も「NO」と言われてきた人たちのためのオーディション。
見た目。
声。
年齢。
才能。
いろいろな理由で、誰かに否定されたり、自分で自分を否定してきたりした人たちが集まった。
そこから七人が選ばれた。
そのことを知ってから、見え方が変わった。
最初はただ、
個性的な七人だな、
と思っていた。
でも、その個性は最初から自信満々で持っていたものではなかったのかもしれない。
むしろ、否定されてきた部分を、どうにか抱えたままここまで来たのかもしれない。
そう思うと、歌っている姿が少し違って見えた。
人は、成功した後だけを見ると強そうに見える。
舞台に立っている人。
賞を取る人。
歓声を浴びる人。
そこだけを見ると、最初から自信があったように見える。
でも実際は、そんなことはないのだと思う。
誰かに否定される。
自信をなくす。
もうやめようかなと思う。
それでも続ける。
また否定される。
それでも続ける。
たぶん、その繰り返しの先に、あの舞台があった。
そう考えると、急に他人事ではなくなった。
自分も型枠大工をしていて、うまくいかないことはある。
何年やっていてもある。
自信がなくなる日もある。
このやり方でいいのかと思う日もある。
何か新しいことを始めようとしても、
今さら遅いんじゃないか。
向いていないんじゃないか。
そんなことを考える。
誰かに「NO」と言われなくても、自分で勝手に言っている。
大人になると、こっちの方が多い気がする。
自分で自分に出す不合格通知は、かなり厄介である。
しかも、出す側も受け取る側も自分なので、反論しづらい。
HANAを見ているうちに、少しずつそんなことまで考えるようになった。
そして、レコード大賞の最優秀新人賞を取った。
その瞬間を見た時、自分でも驚くくらい感動した。
最初に妻から勧められた時は、
「個性的だね」
で終わらせたグループだった。
そんな自分が、少し泣いていたかもしれない。
人生は分からない。
妻のおすすめも、あまり雑に扱わない方がいい。
そこから始まった感動だった。
もちろん、賞を取ったこと自体もすごい。
でも、自分が一番心を動かされたのは、
「NO」と言われてきた人たちが、それで終わらなかったことだった。
否定されたことが、最後の答えではなかった。
その時に認められなかったことが、その人の価値ではなかった。
場所が変われば見つけてもらえることがある。
出会う人が変われば、欠点だと思っていたものが個性になることもある。
そして、自分で嫌いだった部分が、いつか誰かに必要とされることもある。
そんなことを、あの七人が見せてくれたような気がした。
たぶん、自分が感動したのは、彼女たちの過去を知っているからではない。
自分にも少しだけ、似たような気持ちがあるからだと思う。
誰かに認めてもらいたい。
今の自分で終わりたくない。
まだ何かできるんじゃないかと思いたい。
そういう気持ちは、大人になっても案外なくならない。
むしろ、歳を取るほど隠すのが上手くなるだけなのかもしれない。
だから、HANAが大きな舞台で名前を呼ばれた時、
よかったな、
と思った。
そして、そのあと少しだけ、
自分もまだ決めつけなくていいのかもしれない、
と思った。
何が向いているか。
何ができるか。
どこまで行けるか。
今の時点で全部決めなくていい。
「NO」を言われたところが、人生の終点とは限らない。
そんな当たり前のことを、久しぶりに信じたくなった。
妻に最初に勧められた時、もう少しちゃんと見ておけばよかった。
とは思う。
でも、たぶんあの時の自分には、まだ分からなかったのだろう。
何度も見て、
背景を知って、
少しずつ好きになって、
最後に感動した。
もしこの記事を読んでいる人で、まだHANAを知らない人がいたら、一度見てみてほしい。
最初は、自分と同じように、
「個性的なグループだな」
くらいにしか思わないかもしれない。
でも、その七人がどこから来たのか。
どういう思いで集まったのか。
何を乗り越えて、あの場所まで来たのか。
そこまで知ると、見え方は少し変わると思う。
少なくとも、自分は変わった。
妻に「そんなに興味ないかな」と言った人間が、今こうして記事まで書いている。
妻にはまだ、
「最初興味ないって言ったけど、実はかなり見てる」
とは言っていない。
ただ、たぶんバレている。
そのうち言おうと思う。
つよし